2007年9月号掲載

21世紀の国富論

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  • 著者
  • 出版社
  • 発行日
    2007年6月20日
  • 定価
    1,540円
  • ページ数
    254ページ

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著者紹介

概要

今、日本では時価総額の拡大やM&Aといった、米国型資本主義が広がりつつある。だがそれは、産業界に様々な弊害をもたらしている。今後日本は、米国の真似ではない、新しい資本主義のルールを作り、新たな基幹産業を生み出さねばならない ―― 。米国で活躍するベンチャーキャピタリストが、現行の資本主義の問題点を検証し、日本が歩むべき道を指し示す。

要約

米国型資本主義の問題点

 日本は今、会計基準や資本のグローバル化とともに、米国を手本にしようとしている。だが米国型経営、米国型資本主義に問題はないのだろうか。

中長期の経営に欠かせない内部留保の軽視

 あなたが経営者だとする。会社では今、社運を賭けた研究開発を決断しようとしているが、このプロジェクトは失敗の可能性も高い。こんな場合、どうやって資金を用意すればよいか?

 資金調達の方法として「①金融機関から借り入れる」「②株主から調達する」「③コツコツと蓄えた内部留保を使う」の3つが考えられるが、①は、借入金自体がリスクを好まない資金なので、この場合の資金の性格に合わない。②は株主の反対にあい、説得に時間がかかるだろう。

 従って答えは、③の内部留保を使う、になる。自らの未来に長年の蓄えを賭けるというのは、ごく当然の発想である。だが最近は、中長期の経営を行う上で不可欠なこの内部留保を軽視しがちだ。

 このような考え方をもたらした背景に、ITなど新しい産業における利益率の変化がある。

 例えば、マカフィーというコンピュータウイルスのワクチンを作っている企業がある。この会社のグロスマージン(商業でいう粗利益率、製造業でいう売上高総利益率)は100%になっている。

 100%、つまり売上高と粗利益が一致するということは、生産原価がないということである。

 ソフトウェア産業では、作った製品をインターネットでユーザーに送ることができるため、「モノを作るための原価」がゼロになるのだ。

ベンチャーキャピタルの変質

 だが、優れたアイディアがあればすぐに事業が実現するわけではなく、製品の開発はリスクを伴い、時間もかかる。新技術の開発を目指す企業にとり、内部留保が大切であることに変わりはない。

 では、内部留保がない新しい企業はどうすればいいのか? そんな彼らのリスクを引き受け、資金を提供するのがベンチャーキャピタルだった。

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