2024年3月号掲載

漂流する日本企業 どこで、なにを、間違え、迷走したのか?

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著者紹介

概要

「失われた30年」の間、日本企業は伸び悩んでいる。原因は、戦後の成長を支えた“経営の原理”を忘れたこと! すなわち、積極的な設備投資や人材投資で企業を成長させ、結果的に株主にも報いる、という姿勢が失われた。この「従業員主権経営」の復権を、日本企業研究の第一人者が説き、株主偏重の今の経営に警鐘を鳴らす。

要約

漂流の見取り図

 1991年のバブルの崩壊に始まる、いわゆる「失われた30年」。この間、日本企業は懸命に荒波に対応しようと、様々に動いてきた。

 しかし、自分の確固たる意思で、意図的に動いているのではなく、潮の流れに受け身で流されてきた部分が大きいように見える。その意味で「漂流」といえる。

企業は30年間成長していない

 では、日本企業の漂流の姿は、どのようなものだったのか。財務省の法人企業統計のデータをもとに、この30年間の日本企業の姿を分析した。まず明らかになったのは、「成長しない企業」という姿だ。

 バブル崩壊前夜の日本企業の売上は、1300兆円前後。30年後の2021年は、1400兆円前後。額にしてわずか100兆円の増加、増加率はわずか8%弱なのである。30年間の増加幅としては、悲しいほどに小さい。

設備投資は増えていない

 なぜ、日本企業は成長しなくなったのか?

 成長の典型的パターンの1つは、設備投資を起点とする成長である。設備投資は、2つの成長につながり得る効果をもたらす。

 1つは、既存製品の供給能力の拡大である。その能力増によって売上成長が期待できる。もう1つは、新しい投資が新技術の採用や新事業への対応をもたらし、より魅力的な新製品・新事業の拡大につながるという効果である。

 設備投資は、従業員1人当たりで見ると、安定成長期には着実に増加していた。だが、バブル崩壊後は急落、リーマンショックでも急落、そしてその後は回復基調にあるものの安定成長期の水準にやっと戻った程度、という推移である。

しかし、利益率は向上してきた

 バブル崩壊によって日本企業の利益率は下落した。しかし2001年以後は、リーマンショック直後を除き、利益率は上昇している。例えば2009年に3.5%だった大企業の売上経常利益率は、2021年には9.1%にまで上がっている。

 ここに、バブル崩壊以降、利益が増えてもそれを設備投資にあまり回してこなかった日本企業、という姿が見える。それが1つの原因となって、日本企業の労働生産性が向上していないのである。

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