2002年5月号掲載

なぜ国家は衰亡するのか

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著者紹介

概要

大英帝国、ローマ、そして日本 ―― 歴史上、外敵の侵入で滅んだ国はない。衰退はその国の「内なる原因」によってもたらされる。そう主張する著者が、歴史の教訓から「文明衰退の理」を導き出す。そしてそれをもとに、バブル崩壊以降、衰退の兆候を見せている日本の再生の可能性について、考察する。そのカギは日本的価値観にある。

要約

衰退する現代日本

 出口の見えない不況、進まない各種改革、危機に際し場当たり的な対応しかできない政府、相次ぐ企業の不祥事…。今日本は、誰の目にも「衰退」の兆しを露わにしているように見える。

 だが衰退は、何も異常なことではない。ある文明や国家が発展し成熟した後、やがて衰退するというのは、歴史に共通するリズムである。

 従って大切なのは、必ずやって来る衰退を真っ直ぐに見つめることであり、それにどう対処するかということである。

 日本の衰退のパターンを見ると、明治に入ってからの60~70年の発展と衰弱、そして戦後日本の発展と衰弱のパターンには、パラレルな関係がある。そして、この2つのプロセスにおいて重要な位置を占めるのが、明治38年(1905)に終わった日露戦争と、昭和48年(1973)に日本を襲ったオイル・ショックと70年代後半のその克服である。

 この2つは近代日本の成功の「2つの頂点」をなすとともに、その後の経緯、すなわち「過剰」への転落(冒険的な大陸進出と、バブル経済への堕落)においても相似性がある。

ビジョンの喪失と古いパラダイムへの固執

 日本は明治維新以来、右肩上がりの成長を続け、第1次世界大戦の間はかつてない好景気、すなわちバブルに酔いしれた。

 だが、戦争終結によりバブルは崩壊、関東大震災の発生が追い打ちをかける中、日露戦争から20数年後の昭和2年(1927)には「金融恐慌」を迎え、その成長は終わりを告げる。

 しかし実は、日本の将来が不明瞭になったのは、日露戦争に勝利したその時だった、と言える。

 しかし“世界の1等国”になったという達成感は、すぐに目的の喪失感に変わり、次に何をすべきなのか、今後どのような日本を築くべきかという「ビジョンを欠く」結果となってしまった。

 そして政府の主流は、西洋列強がたどった道を後追いすればいい、という考えに傾く。

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