2021年12月号掲載

文学部の逆襲

経済・経済学科学・技術・環境文化・思想・歴史

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著者紹介

概要

今日、資本主義は一部の者だけを潤し、多くの人は豊かになれない。民主主義も、資本の意向に左右され、機能不全に陥っている。こうした状況を打破するカギは、「物語」だ。歴史を振り返れば、感動を生む物語が世の中を新しい方向へ導いた。本書は、人々に共感される「大きな物語」、それを紡ぎ出す“人文の力”の重要性を説く。

要約

資本主義の暴走と民主主義の機能不全

 産業革命以降、200年以上にわたり、資本主義は経済の拡大と人々の豊かな生活に貢献していた。ところが、1990年代に成立した新自由主義の世界で、資本主義の暴走が始まった。

 新自由主義の世界では、政府による企業への規制は良くないことであり、政府が社会保障を負担することすら、市場の効率を損なうとみなされる。

 そのため、法人税や富裕層の所得税を減税し、その不足分を庶民に賦課する消費税で賄うという、庶民から企業や富裕層への所得移転が多くの国で取り入れられていった。

経済成長の停滞と格差

 新自由主義の世界になって以降、2000年代前半までは世界の統一市場が実現し、様々な規制緩和が行われることによって経済活動が活発化し、世界のGDPは拡大した。

 しかし、2010年代以降、日米欧の経済成長は停滞したままだ。独・仏・英・伊のGDP成長率は年平均で0.7%、日本はマイナス1.1%である。

 アメリカは4.1%と一見順調に見えるが、国民の約8割を占める中間層・低所得者層の実質所得はほとんど増えていない。つまり、一部の者だけが富んでいく経済構造になっているのだ。

資本による政治の買収

 大多数の人々が豊かさを得られない新自由主義経済なら、なぜ政策転換を行わないのか?

 それは、民主主義が機能不全に陥っているからだ。民主主義の本質的要件である「国民による政治的決定」が、成立し得ない状況になっている。「資本による政治の買収」が起きているのだ。

 そしてこの構造がもたらすのは、有権者にとってはどの候補者に投票しようが、どちらの政党を選ぼうが、結局は資本の意向が反映された政策が実現されていくという現実なのである。

 21世紀前半に生きる私たちは、このように閉塞した状況に置かれている。

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野中郁次郎 日経BP・日本経済新聞出版本部