2020年2月号掲載

影響力の武器実践編[第二版] 「イエス!」を引き出す60の秘訣

Original Title :YES! 10th Anniversary Edition:60 secrets from the science of persuasion

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著者紹介

概要

社会心理学のベストセラー『影響力の武器 実践編』に、最新の研究成果を盛り込んだ第2版の邦訳である。「説得は科学」だとする著者たちが、社会的影響力の原理に基づく説得術を公開。「競争入札で売値を上げるには、低めの価格から始めよ」など、興味深い事例を交えながら、人々に働きかけ、望ましい行動を引き出す秘訣を語る。

要約

科学に基づく説得術

 説得は“科学”である。

 自分は説得については初心者だと思っている人でも、説得の心理を理解して、科学的に有効な方法を使えば、説得にかけてはベテラン級になれる。

 では、その方法とはどのようなものか? いくつか具体的に見ていこう。

上位商品の発売によって従来品が売れ出す不思議

 数年前、米国の台所用品専門店ウィリアムズ・ソノマが、それまで最もよく売れていたパン焼き器よりはるかに高性能の新機種を売り出した。ところが、この新製品の投入後に、従来品の売上が倍増するという現象が起きた。なぜか。

 研究によれば、消費者がある商品について複数の選択肢を検討する場合、「妥協の選択」を行う傾向があるという。つまり人は、最小限必要なものと最大限手に入れたいものの中間を選びがちだということだ。

 買い手は「2つのうちから1つだけ選べ」と迫られると、安い方を選んで妥協することがよくある。しかし、これら2つより高価な第3の選択肢が加わると、妥協するポイントが低価格商品から中間価格商品へとシフトする。ウィリアムズ・ソノマのパン焼き器の場合は、一段と高価な製品の登場により、前からある製品を選ぶ方が賢明で経済的な選択になったわけだ。

 こうした妥協の効果を活用できるのは、パン焼き器に限らない。複数の商品やサービスを取り揃えている人なら、高価な商品を先に提示することで、中間価格の商品の魅力が高まることがよく理解できるはずだ。

順番が早い方と遅い方、競い合いではどちらが有利?

 誰かと競い合う状況に身を置いていると想像してみてほしい。例えば、昇進を巡る戦いで最終候補の3人に残ったとする。その選考の場で、審査を受ける順番が結果に何か影響を及ぼすと、あなたは思うだろうか。

 ガリンスキーは、さらに調査範囲を広げたが、結果は同じだった。ある音楽コンテストの調査では、大会で演奏順が後ろの方だったアーティストは多くの場合、演奏順が早かったアーティストよりも良い成績を収めていることがわかった。

 これは単に、登場順が早いと、その人に対する審査員の記憶が色あせる、ということなのかもしれない。だが興味深いことに、参加者全員のパフォーマンスが終わった後、まとめて評価を行うのではなく、参加者を1人ずつ、パフォーマンスを終えた段階で評価する場合も、やはり最後に登場する人に優位性があるようなのだ。