2008年9月号掲載
三国志の人間学 新装改訂版
著者紹介
概要
曹操、劉備、諸葛孔明…。数多の英雄の盛衰が描かれた『三国志』は、まさに人間学の宝庫だ。人材活用法、戦略と戦術のあり方等々、登場人物の行動に学ぶべき点は多い。本書はこの史書に現れる人物のエピソードを紹介しつつ、生き方の原理原則を説く。初版刊行から20余年経つが、今も色褪せない内容に、著者の見識の深さ、そして人間の普遍性が感じられる。
要約
勝者の人間関係学
三国志には数多くの英雄が出てくる。
これら英雄たちは、天下を巡って攻防を繰り広げたが、最後に残ったのは呉の孫権、魏の曹操、蜀の劉備の3人だけで、あとは皆滅んでしまった。
なぜ、彼らだけが生き残ることができたのか?
その理由の1つは、実に克明に人材を集めたことだ。それも、礼を尽くして人材を集めた。
もう1つは、この3人だけが天下を窺う戦略を持っていたこと。これは当人が持ったというより、集めた人材、つまり参謀たちが持っていた。
そしてもう1つ、この3人は集めた人材を人間として尊重し、十分に遇した。
これらが、3人を生き残らせた共通項である。
人材の収集と尊重
「三顧の礼」を尽くす。これは、諸葛孔明を協力者にするため、劉備が孔明の草庵を3度訪ねたという故事に由来する言葉だ。すなわち ――
1度目は、訪ねていったが留守だった。2度目は、孔明が家に帰っていると聞き、雪の降る中を訪ねるが、この時も留守だった。
3度目は、孔明がいることを確かめておいて訪れるが、孔明は昼寝中。劉備は門のところに立って待ち、夕方目覚めた孔明に、「どうか私のところへ来て、天下のために尽くしてほしい」と頼む。
「私はもう世捨人だから」と孔明は断るが、「あなたが出てこなければ天下は駄目になる」と、涙を流して懇望した。孔明も、「そこまで言われるのなら」と、劉備に同道することになる。