2026年6月号掲載
軍民両用化する技術 「デュアルユース問題」とは何か?
- 著者
- 出版社
- 発行日2026年3月30日
- 定価1,210円
- ページ数334ページ
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著者紹介
概要
軍事と民生、その両方に利用できる技術を「デュアルユース技術」という。例えば、バイオテクノロジー。これは難病の治療に寄与する反面、生物兵器へ転用される恐れも。AIもまた、監視やテロ計画の立案に利用され得る。こうした恩恵と危害を与える科学技術の例を挙げ、それがもたらす難問、「デュアルユース問題」を論じる。
要約
宇宙技術
「デュアルユース(軍民両用性)技術」とは、軍隊(軍事)と民間(民生)の両方で利用できる技術のこと。そのいずれにも利用されてしまう状況を問題視するのが、「デュアルユース問題」だ。
問題とは、技術が兵器へ転用されること、あるいは兵器化される可能性があることを意味する。私たちは技術がもたらす恩恵だけを期待しがちだが、実際には危害も生み出すのである。
GPS ―― 米国の軍事システム
宇宙技術は現代生活に恩恵をもたらしている。その代表例がGPS(グローバル・ポジショニング・システム)である。GPSは高度約2万kmの軌道上を周回する約30個の人工衛星群であり、正確な時刻と位置情報を送信している。
GPSで日常生活が便利になったが、実はこれは米軍が開発した軍事システム。ということは、米国の都合で突然使用が停止する可能性がある。
そこで宇宙活動を行う国はGPSに依存しないシステム、すなわち自前の測位衛星を打ち上げ、自前のGPSを構築しつつある。EUのガリレオ、中国の北斗、日本のみちびきなどの測位衛星がそうだ。
それでも、測位の精度や受信システムの問題があるため、多くの国は未だにGPSに依存している。
そして、GPSは米国の敵対国も使用できるのだ。皮肉なことに、米国と敵対する国々は、米国のGPSを利用した誘導ミサイルを保有している。
通信衛星 ―― スターリンクが戦況を左右
現在では、軍事分野における民間通信衛星の重要性がさらに増している。特に、イーロン・マスク率いるスペースXのスターリンクは重要だ。
スターリンクは、無数の小型衛星をつなぐことで地球上のあらゆるところから通信を可能にした。これが、ウクライナ戦争で使用されている。
2022年の戦争開始当初、ロシア軍はウクライナの通信施設を破壊し、ウクライナ軍は機能不全に陥った。ここでスターリンクが登場する。
破壊されたウクライナ軍の通信網の代わりに、これが通信網を代行した。民間インフラで、宇宙にあるスターリンク衛星群を、最終的にロシアは妨害できなかった。2025年2月時点で、6750基に及ぶ衛星群を破壊しつくすことは不可能に近い。