2026年6月号掲載

軍民両用化する技術 「デュアルユース問題」とは何か?

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著者紹介

概要

軍事と民生、その両方に利用できる技術を「デュアルユース技術」という。例えば、バイオテクノロジー。これは難病の治療に寄与する反面、生物兵器へ転用される恐れも。AIもまた、監視やテロ計画の立案に利用され得る。こうした恩恵と危害を与える科学技術の例を挙げ、それがもたらす難問、「デュアルユース問題」を論じる。

要約

宇宙技術

 「デュアルユース(軍民両用性)技術」とは、軍隊(軍事)と民間(民生)の両方で利用できる技術のこと。そのいずれにも利用されてしまう状況を問題視するのが、「デュアルユース問題」だ。

 問題とは、技術が兵器へ転用されること、あるいは兵器化される可能性があることを意味する。私たちは技術がもたらす恩恵だけを期待しがちだが、実際には危害も生み出すのである。

GPS ―― 米国の軍事システム

 宇宙技術は現代生活に恩恵をもたらしている。その代表例がGPS(グローバル・ポジショニング・システム)である。GPSは高度約2万kmの軌道上を周回する約30個の人工衛星群であり、正確な時刻と位置情報を送信している。

 GPSで日常生活が便利になったが、実はこれは米軍が開発した軍事システム。ということは、米国の都合で突然使用が停止する可能性がある。

 そこで宇宙活動を行う国はGPSに依存しないシステム、すなわち自前の測位衛星を打ち上げ、自前のGPSを構築しつつある。EUのガリレオ、中国の北斗、日本のみちびきなどの測位衛星がそうだ。

 それでも、測位の精度や受信システムの問題があるため、多くの国は未だにGPSに依存している。

 そして、GPSは米国の敵対国も使用できるのだ。皮肉なことに、米国と敵対する国々は、米国のGPSを利用した誘導ミサイルを保有している。

通信衛星 ―― スターリンクが戦況を左右

 現在では、軍事分野における民間通信衛星の重要性がさらに増している。特に、イーロン・マスク率いるスペースXのスターリンクは重要だ。

 2022年の戦争開始当初、ロシア軍はウクライナの通信施設を破壊し、ウクライナ軍は機能不全に陥った。ここでスターリンクが登場する。

 破壊されたウクライナ軍の通信網の代わりに、これが通信網を代行した。民間インフラで、宇宙にあるスターリンク衛星群を、最終的にロシアは妨害できなかった。2025年2月時点で、6750基に及ぶ衛星群を破壊しつくすことは不可能に近い。

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