2025年10月号掲載

経営者のための正しい多角化論 世界が評価するコングロマリットプレミアム

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著者紹介

概要

バブル崩壊後、「選択と集中」に重きを置く日本。一方、世界では、複数の事業を持つコングロマリットづくりが進む。2020年には“投資の神様”ウォーレン・バフェットが、日本の複合企業、商社の株に投資を始めた。コングロマリットはプラス要因。日本は目を覚ませという著者が、選択と集中の問題点、正しい多角経営を説く。

要約

再評価されるコングロマリット

 世界的なIT革命の勃興で幕を開けた21世紀、総合商社には強い逆風が吹いていた。

 IT革命は商品・サービスの売り手と買い手の直接のやり取りを可能にすると考えられた。この文脈で、商社が中抜きされる「商社不要論」が唱えられ、日本の総合商社株は激しく売られた。

 この頃から、日本における「コングロマリット」(複数の異なる事業を抱える企業)の評判は芳しくないままだ。コングロマリットを形成する企業の株価は割安に放置されるとされ、「コングロマリットディスカウント」と呼ばれる。

 しかし、本当にコングロマリットは唾棄すべき存在なのだろうか?

投資の神様がコングロマリットの価値を認めた

 2020年8月、アメリカの投資の神様、ウォーレン・バフェットが、日本の商社株への投資を開始した。この一報に日本のメディア、関係者は驚く。

 報告書によれば、2020年8月31日時点で、バフェットは5大商社株(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)の5%超を取得済み。筆者が知る限り、彼が日本の上場個別株を大量保有するのは初だ。しかも、彼のコメントは、日本の伝統的な商社観を全く否定するものでもあった。

 バフェットは、日本の商社が「世界中で合弁会社を作っている」ことを高く評価し、それらが「将来、相互に利益をもたらす機会があると望んでいる」とコメントした。つまり、バフェットはコングロマリットや多角化に理があるからこそ、商社株への投資を決断したと宣言したのだ。

 彼の商社株投資で状況は一変した。例えば、20年は1株800円台半ばだった三菱商事の株価は、24年には3700円台と4倍以上に跳ね上がった。

 コングロマリットは、株価やビジネスを押し下げるようなディスカウント要因ではない。むしろ、株価や業容を押し上げるプレミアム要因といえる。

 これからは、いかに「コングロマリットプレミアム」を創造するかが、経営者に求められている。