2025年6月号掲載

デザイン経営

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著者紹介

概要

芸術作品のような美しいスポーツカーを作るフェラーリ。ユーザーが使いやすいiPhoneを開発したアップル。業態は異なるが、どちらも製品の“デザイン”に重きを置くことで、人々のニーズを掘り起こし、優れた業績を上げている。本書は、こうした「デザイン経営」を行う世界の先進的な企業を紹介。その類型と特長を解説する。

要約

デザイン経営とは何か

 デザインに注力して、好業績を上げている企業がある。デザインに投資することで、高い競争力を保ち、営業利益や株価の面で高いパフォーマンスを発揮しているのだ。こうした「デザイン経営」の推進は、今や世界的なトレンドである。

デザインの3つの意味

 一言にデザインといっても、次の3種類がある。

①ビジネス上の問題解決

 これは、アメリカのデザインコンサルティング会社IDEO(アイディオ)が提唱する「デザイン思考」である。ユーザーへの共感から始まり、問題定義、そしてアイディアの創造へと進んでいく一連のプロセスを、デザインとして示すものだ。

 事例としては、アップル・コンピュータのマウスのデザインや、使いやすいスマホのユーザーインターフェース(UI)デザインが含まれる。

②最終製品の“かたち”の決定

 これは、コンセプトに対応した美しいかたちを与え、芸術作品のような工業製品を作るという意味である。いわゆるインダストリアル(工業)デザインだ。具体的には、美しい流線形を備えたフェラーリのスポーツカーのボディが挙げられる。

 付加価値の源泉が、デザイン思考ではマーケティングとの親和性が高いユーザーの行動や好みの把握であるのに対し、インダストリアルデザインは、審美的成熟に達したデザイナーの直観である。

③工学的設計

 エンジンの性能設計や建築物の構造計算などがその具体例である。インダストリアルデザインが、美的観点からそれ以上付け加えたり削除したりすることのできない「完成した美しいかたち」を実現するのに対し、工学的設計で念頭に置かれているのは、あらかじめ設計した通りの性能が保証され、計算通りの強度を発揮できるかという点だ。

 デザインプロジェクトの性格は、上記3つの要素の組み合わせで示すことができる。すべてをバランスよく備えたプロジェクトもあれば、1つの要素が突出したプロジェクトもある。

CEOとCDOが会社の意思決定を行う

将来の生活様式を先取りして構想する

 デザインという言葉は、一般に、意匠、考案、設計、図案といった意味で使われることが多い。

 だが、デザインプロジェクトは、将来のことを心に描いて先取り的に実現するという、envisionという言葉の持つニュアンスを備えている。