2025年6月号掲載
SBNRエコノミー 「心の豊かさ」の探求から生まれる新たなマーケット
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年3月21日
- 定価2,200円
- ページ数298ページ
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概要
「SBNR」(Spiritual But Not Religious)とは、宗教的ではないが、精神的な豊かさを求める人々のこと。もともと無宗教層が多い日本人は、約4割がSBNRだという。ヘルシーな食事を好み、ヨガを楽しみ、サウナ施設の“巡礼”を行う。そんな彼らの価値観・ライフスタイルの特徴や、マーケティングへの応用などについて説く。
要約
SBNRなライフスタイルの実態
今、「SBNR」(Spiritual But Not Religious)が、世界的な潮流として注目されている。
これは「宗教的ではないがスピリチュアル」という意味で、「特定の宗教を信仰しているわけではないが、精神的な豊かさを求める」人々を指す。
ここでいう「スピリチュアル」とは、心霊現象などを信じるという意味ではない。リトリート(日常から離れた場所に身を置き、自身を深く内省するための時間を取ること)やマインドフルネスなど、目に 見えない精神的な価値をもたらすものへの関心が非常に高いことを指している。
例えば、「ヨガを健康法として楽しんでいるけれど、宗教的な教えには関心がない」といった感覚を持つ人たちは、SBNR層に該当する。
日米で拡大するSBNR層
米国のリサーチ会社の調査によれば、2012~23年の約10年間でSBNR層はゆるやかに拡大し、現在では米国民の約5人に1人がSBNR層だという。
日本でも、心の豊かさを提供する「SBNR的」な商品やサービスはこの数年で非常に増えている。サウナ、アウトドア、睡眠ケア商品など。
日本におけるSBNR層の割合は、他国と比較しても非常に多い。2022年に博報堂/SIGNINGが、日本・フランス・インドで20~69歳の男女を対象に調査した結果、日本のSBNR層の割合は43%にのぼり、調査対象国中、最も多かった。
「SBNRな人」ってどんな人?
日本人の4割が該当するこの「SBNR層」を詳しく見ると、次のような特徴が見られた。
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- ・若年層が多い
- ・健康維持に関心がある
- ・旅行に時間やお金をかけたい
- ・自分の感性を磨きたい
では、具体的にどんなことをしているのか? 分析すると、次のような行動習慣が見えてきた。
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- ・ヘルシーな食事
- ・掃除
- ・お風呂
- ・朝日を浴びる
- ・お墓参り
- ・ウォーキング
つまり、「スピリチュアル=精神的充足を得るための行動」の大半は、ごくありふれた日常の行動だ。このような「心のメンテナンス」のためのささやかな行動が日常的に根付いていることが、日本のSBNR層の大きな特徴だといえる。
「SBNR」の再定義
SBNR層が実践しているライフスタイルを見ると、SBNR層とは、次の「S・B・N・R」の4要素を大切にして生きる人たちだといえる。