2008年1月号掲載

波乱の時代(上・下)

Original Title :The Age of Turbulence:Adventures in a New World

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著者紹介

概要

大統領よりも影響力がある、とも言われた前FRB議長アラン・グリーンスパン。1987~2006年、氏が議長として米経済の舵取りを行っていた時期は、同時に市場資本主義が世界中に急拡大した激動期でもあった。この時、氏は何を見つめ、何を考えていたのか。そして今後の世界の姿をどう見るのか。その半生、および資本主義に関する氏の哲学が余すところなく語られる。

要約

経済成長の基盤は何か?

 アダム・スミスの『国富論』が出版されたのは1776年だが、そのはるか以前から、国家の繁栄に至る道については議論されてきた。それはいまだに続いており、終わりのない議論といえる。

財産権の保護が経済成長の基盤

 経済成長に影響を与える要因はいくつもあるが、これまでの経験から言えば、「国による財産権の保護」が経済成長を促す制度の根幹である。

 そのことは、中国が農民に限定的な所有権を認めた時、単位面積当たりの収穫高と農民の生活水準が目に見えて向上した事実からも明らかだ。

 財産権を国家権力が保護しない場合には、自由な貿易が阻害され、競争と比較優位による大きな利点が生まれにくくなる。

 財産権を確立するのは、資産を保護し、その資産を活用して利益を追求できるようにするためだ。

 個人には財産権があり、その権利は法によって守られているという見方が社会に深く根付いていなければ、自由市場経済はうまく機能しない。

経済が成長するのはなぜか?

 過去35年間、多くの国が経済の自由化に努力したことで、世界の人口1人当たりのGDPは着実に伸びてきた。

 世界銀行によれば、1日1ドル未満で生活している最貧困層の総数は1990年の12億4700万人から2004年には9億8600万人に激減している。

 同書で特に重要な点は、個人の自主性の重要性を初めて指摘したことだ。国が豊かになるには、個人が「自分の利益を自分の方法で追求する完全な自由」を持つようにするべきだと論じた。

 その際、競争がカギになる。競争があれば、各人はもっと生産性を高めるように促されるからだ。