2007年6月号掲載

クリエイティブ・クラスの世紀 新時代の国、都市、人材の条件

Original Title :THE FLIGHT OF THE CREATIVE CLASS

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著者紹介

概要

大ヒット映画『ロード・オブ・ザ・リング』は、ハリウッドでなくウェリントンで作られた ―― 。この例が示す通り、これまで経済、文化等の面で世界一だった米国の座が揺らいでいる。原因は、創造的な才能を持つ“クリエイティブ・クラス”の大移動にある。こうした現象を、産業革命以来の大変化という著者が、彼らを軸とする新たな競争、経済等について語る。

要約

アメリカ史上最大の脅威

 『ロード・オブ・ザ・リング』3部作でアカデミー賞監督となったピーター・ジャクソンは、ニュージーランドのウェリントンにいる。

 そこは緑が溢れる、人口40万人の小規模な都市だ。世界的な文化が生み出されようとは想像もできなかったこの場所で、彼は世界の最先端を行く映画製作所を作り上げたのである。

 アメリカの経済力や文化力を象徴する映画産業において、卓越した作品がハリウッドではない場所で作り出された。これをどう考えればよいのか。

 通常、ハリウッドで映画を製作する時は、カリフォルニア州にいる監督、俳優、スタッフたちに仕事が与えられる。

 その水準は高く、こうした映画製作プロジェクトは、一国全体に広がる産業を生み出す場合さえある。事実、ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』は、ゲームやタイアップ商品といった映画関連産業を一気に成長させた。

 だが、『ロード・オブ・ザ・リング』はウェリントンで製作され、その経済効果の恩恵を受けたのはニュージーランドである。

 これはアメリカにとって、産業革命以来の最大の挑戦であり脅威である。同国は今、クリエイティブな競争力を奪われる瀬戸際にいるのだ。

 この脅威の背景には、才能を獲得するという新しいグローバル競争があり、その競争は次の数十年で世界を確実に変えてしまうほどの意味を持つ。

 今、国際競争力という言葉は、クリエイティブな才能を集め、引き止める力という意味が、その中心となっているのである。

 世界中から才能が集まった結果、かつてはアメリカだけに、先端的で最も収益性の高いクリエイティブな産業は存在していた。しかし現在、その繁栄の源は世界中に広がり始めている。