2007年3月号掲載

いい茶坊主 悪い茶坊主 強い組織とは何か

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著者紹介

概要

ゴマすり、おべっかつかいなど「茶坊主」には悪いイメージが先行する。だが、江戸幕府内の特殊な職業集団であった茶坊主は、協調性、情報収集力、調整力などに優れた、「江戸城内のコンサルタント」として諸大名に重用されていた。このような茶坊主の特性は、現代の厳しい雇用環境の中で生き残り、そして昇進していくために、学ぶに値する能力である。

要約

「茶坊主」とは何者か?

 「茶坊主」と聞いてすぐ頭に浮かぶ映像は、「お盆を捧げ持って廊下を歩いている坊主」というのが一般的だろう。

 茶坊主がどんな身分の者で、どんな仕事をしていたのか、正確に答えられる人は少ない。知られていないわりに、ゴマすり、要領がいい、おべっかつかいなど、悪いイメージだけが先行している。

 では、そもそも茶坊主とは何者か?

 江戸城内において、僧形(剃髪、法服)で雑役に従事する者たちを総称して「坊主」と呼んだ。広大な城内を整理・管理する必要性から生まれた、江戸城独特の職制である。

 江戸城は、表(幕府役所)と奥(大奥)の二大区画に分かれている。この表の男世界で、普通は女性がやるような掃除、湯茶の接待、案内・取次などの雑用を受け持っているのが、坊主衆だった。

 彼らは大名たちに給仕するため、茶湯を持って廊下や座敷をうろうろしているところから、俗に茶坊主と呼ばれた。

 身分こそ低いが、茶坊主はれっきとした幕臣、すなわち武士である。

 彼らは、職務上の特権で江戸城内の数多くの座敷へ自由に出入りできた。そのため、大名たちの会話から、全国各地の様々な動静、新しいニュースなどをいち早くキャッチできた。

 幕府は、大名たちが結束することを警戒し、彼らの交際範囲を制限していた。従って、ほとんどの大名たちは、特定の茶坊主と親密な関係を保ち、定期的な謝礼を払う代わりに、情報をもらったり、江戸城内で便宜を計らってもらったりした。

 茶坊主の町屋敷には、藩の側用人などが、幕府の見解などを打診するために頻繁に訪れた。