2005年10月号掲載
テクノロジストの条件 ものづくりが文明をつくる
Original Title :THE ESSENTIAL DRUCKER ON TECHINOLOGY
著者紹介
概要
「ドラッカーは、ものづくりの技術が文明をつくるという。だからこそ技術のマネジメントに力を入れる」(編訳者・上田惇生氏)―― 。“マネジメントの生みの親”ドラッカー教授の、初の技術論の集大成が本書である。「技術のマネジメント」「イノベーションの方法論」など、いわゆる技術者だけでなく、あらゆる知識労働者が学ぶべき知恵が凝縮されている。
要約
知識労働の生産性を上げるには?
20世紀の企業において、最も価値ある資産は生産設備だった。しかし21世紀において、最も価値ある資産は知識労働者とその生産性である。
先進国では、知識労働者が労働力人口の中核を占めつつある。そして彼らの生産性にこそ、先進国の生存と繁栄がかかっている。
知識労働の生産性向上の条件
知識労働の生産性を向上させるための条件は、大きく6つある。
- ①仕事の目的を考える。
- ②働く者自身が生産性向上の責任を担う。自らをマネジメントする。自律性を持つ。
- ③継続してイノベーションを行う。
- ④自ら継続して学び、人に教える。
- ⑤知識労働の生産性は、量よりも質の問題であることを認識する。
- ⑥知識労働者は、組織にとってコストではなく資本財であることを理解する。
まず、知識労働で重要なことは「仕事の目的」である。肉体労働では、なすべき仕事は常に明らかで、例えば自動車の組み立てラインではやるべきことがプログラム化されている。
これに対し、知識労働で問題になるのは、仕事とは何かということである。肉体労働と異なり、仕事はプログラム化されていない。
従って、知識労働の生産性を上げるために最初に行うことは、行うべき仕事の内容を明らかにし、その仕事に集中することである。
ところが、多くの知識労働者が本来の仕事を放り出して書類を書いたり、会議への出席を求められたりしている。
仕事が何かが明らかになれば、続くその他の条件に取り組むことも容易となる。
具体的にはまず、仕事の質や量、時間やコストについて、いかなる責任を持つべきかを判断することが容易になる。さらには、自律性を持つことができるようになる。そして、継続して学び、教えることも当然のことになる。
先進国にとってはテクノロジストがカギ
多くの知識労働者は、知識労働にのみ携わるのではなく、肉体労働も行う。そのような人たちを、特に「テクノロジスト」と呼ぶ。
このテクノロジストが、急速に増加しつつある。病院の検査技師、レントゲン技師、超音波映像技師などの技術者がそうだ。彼らは先進国にとって、競争力要因であり続ける人たちである。なぜなら、もはや純粋な知識労働者を持つだけでは、最先端を進むことは不可能になっているからである。