2003年12月号掲載

福祉を変える経営 障害者の月給1万円からの脱出

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著者紹介

概要

日本の障害者が共同作業所などで働いて得る月給はたった1万円。これでは自立など夢のまた夢だ。こんな現状が放置されているのは、日本が市場経済の国だという認識が福祉の現場にないからだ ── 。ヤマト運輸会長退任後、ヤマト福祉財団の職に専念する小倉昌男氏が、「経営」という視点から福祉を見つめ、障害がある人もない人も共に生きる未来への展望を開く。

要約

障害者の働けない国、日本

 「私は障害をもって生まれたことを不幸とは思わないが、日本の国に生まれたことを不幸だと思う」—— 。ある障害者の言葉である。

 日本は障害者にとって住みにくい国だ。日本の行政官は、目的と手段を取り違えていることが多いが、障害者問題に対してもそうである。

 例えば、施設を造ることには熱心だが、その施設を生かして何をするのかという視点がない。行政の仕事のために福祉事業があるのであって、肝心の障害者の幸せが忘れられているのである。

 そもそも日本には、障害者の働く場が非常に少ない。

 「障害者の雇用促進等に関する法律」によると、企業は常用労働者の1.8%以上の障害者を雇用しなければならない。ところが、この法律には重い罰則規定がないため、障害者雇用は一向に進まず、2001年の調査では、一般企業における雇用率は1.49%にとどまっている。

 その対策として国が用意したのが授産施設という就労の場だが、全国に1861カ所(2001年)しかなく、全国の障害者の雇用需要にはとても対応できていない。

 そこで、障害者の親たちが作ったのが、「共同作業所」と呼ばれる就労施設である。この共同作業所をみると、日本の福祉を取り巻く行政や社会システムの遅れがわかる。

 共同作業所という事業は福祉の一環になるので、国=厚生労働省が「社会福祉法人」としての認可を出す。認められると、国が立派な施設を造り、職員にも地方公務員並みの給与が支払われる。

 この状況は、老人ホームや保育施設の問題と酷似している。いったん認可を取ってしまえば国からカネが出るが、その認可を取るまでが難しい。認可条件として、土地や建物が必要となるからだ。

 だが、これは非常におかしな話である。